紙をつくった男の話 4
会社は小さいですが、彼自身は大きく、自分の選んだ市場のなかでは群を抜いてそびえる存在でした。
成功の決め手は、価格を20万ドル以下に抑え、工場長や技術者にとって購入しやすい装置だけに製品を限定したことです。
クロフタの相手はもっぱら彼と経験や知識を同じくし、しかも彼の仕事に敬意を抱いている製紙工場の技師たちでした。
委員会の決定、政治的話合い、大きな財力などに依存する巨大プロジェクトは敬遠しました。
それは金をもうけるには魅惑的なルートですが、万一相手が失敗すれば、小さな彼の会社は破産しかねません。
・・・このような限定戦略は、ビジョンあるいは積極性を制限するのではなく、それにすべてを集中することによってうまくいくのです。
またクロフタは洞察力にすぐれ、彼は自分の選んだ範囲の市場についてはその全容を余すところなく把握していました。
同じように成功を収めながら対外的には無防備なアメリカ人が多いなかで、クロフタは初めから自分が世界経済の競争のなかにいることをよく心得ていました。
特許を握っているおかげで彼の立場は強いものです。
しかしアメリカの産業界で彼が指導的な地位にいられるについては、その積極的な国際的姿勢もまた大きくものを言っているのです。
たとえクロフタがどこかの国で失敗をして、海外のライバルがその国の市場で圧倒的な市場占有率を手に入れ、またそれを足がかりにしてアメリカの彼の拠点を襲おうとしても、クロフタ・インターナショナルの存在が大きく働いてそれを防ぐことができます。
しかし、彼も町全体の廃水処理という大きなシステムを扱う仕事に移行する道を選び、さらに上水道の浄化へと事業を多角化する時が来て、国際的な版図と業界の評価という利点を失ってしまいました。