影について 7
こうして、さまざまな小さな影に邪魔され、助けられながら、ゲドは最終的に自分自身の隠された半面である名なきものと対決することになります。
ゲドが追いつめた彼のシャドウの根拠地は、大洋の東の果ての見渡す限りの水の中にありました。
そこには本来、あるべき筈もないところに陸地があり、その幻の砂浜でゲドは自分の影と向き合います。
ゲドの前にある闇は次第に人間の形をとりだし、最初、かじ屋であった父の面影から、ゲドのライバルであるヒスイの姿に変わり、次々とゲドがこれまでかかわった男性のイメージがあらわれます。
しかし、最後には、その闇は目も口も耳もない顔を持ち、するどい爪をひからせた怪獣の姿となり、ゲドと向き合います。
その時、ゲドははっきりとその影の名を告げるのです。
「ゲド!」
そして、その影もまた同時に彼の名を叫びます。
ゲドは両手をさしのべて、己の影と抱き合い、光と闇はとけあって、ひとつになったのです。
やがて、ゲドの立っていた砂浜は洪水のように水があふれ、またなにもない大洋に戻ってしまいます。
ゲドはこうして、父と思い、ライバルとして争い、敵として戦ってきたさまざまなものが、実は無意識の大洋から浮かびあがるシャドウである自分自身のイメージであったことを自覚するのです。
この時、ゲドは真の名まえの意味するものを知るのです。
それは現象として自分の前にあらわれる姿だけではなく、それを見る自分も含んだものごとの全体の姿であることを……。